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Zippo , Jeans , etc…

WWⅡ Black Crackle Zippo

 

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戦争による物資統制を受けた所謂大戦モデルと言えば、リーバイスのS501XXを思い浮かべる方が多いと思いますが、同じアメリカ製であるジッポーにも戦争の影響を受け、それまでの材質・仕様の変更を余儀なくされた大戦モデルと呼ばれる物があります。それがこのブラッククラックルです。

 

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製造された年代が年代なだけに、現在では状態の良い物や、イレギュラー物は高値で取り引きされる希少品で、特に色の残り具合は価値と状態の良し悪しを左右する重要な要素だと言えます。

この固体の色残りは8割程度、擦れ易い角部分や塗装の厚み自体は少し薄くなっているものの、全ての面に塗装が残っている良い状態です。

 

さて、この第二次世界大戦前後には見られない特徴的な黒い表面塗装は、ケースのブラス材、及びメッキに使用していたクロムの不足により、ケース素材には粗悪なスチールを、そして表面は錆止めの為に黒い塗装を施した事で生まれました。

当時このブラッククラックルは民間には販売されておらず、全て軍のPX(売店)に卸されていたそうです。ジッポー社は軍からの大量の発注に製造を間に合わせる為(仕上げ塗装自体はジッポー社ではなく外注だったそうですが)表面に黒く塗装を施した後、熱風で急激に乾燥させる事で結果的にこのヒビ割れた様なクラック仕上げになったとされています。(下の画像をアップにしてみて下さい。少し分かりにくいですが、クラックというよりもシワシワ?な感じです。)

 

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この黒い仕上げ塗装に関しては、“光の反射を抑え、戦地で敵に見つかりにくい”という効果があったとされていますが、個人的にはそれはどうかと思います。そもそも光の反射で敵に見つかるリスクがある様な状況下で、ライターを取り出し、火をつけるという事自体が危険な行為な筈。ライターが艶消しかそうでないかはあまり意味が無い様に思うのです。まぁどちらかと言えば、艶消しである方が良いに越した事はないでしょうが、この様な表面仕上げにした理由付けにはならないでしょうし、単に錆止めの為だったモノが当時の人達には良い様にとられたのかな、なんて思います。

 

それはさて置き、このブラッククラックルが製造されていたのは1942年から45年まで。

そして42年から43年前期、43年後期から45年とで僅かにディテールの違いがあり、そこで年代を見分ける事が出来ます。

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判別は簡単で、ヒンジがこの様に3バレルなら43年後期から45年のモノ。4バレルなら少し古い42年から43年前期のモノとなります。

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この画像では少し分かりにくいですが、よく見るとフリントホイールの角が面取りされています。これも43後期〜45年の特徴で、前期型は面取りがされていません。インナーにZIPPOの刻印が入るのも後期型。前期型にはありません。

 

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フリントホイールのアイレットは真鍮製ですが、自分の知る限りここはメッキされていたり、黒塗りだったりと固体によってまちまちの様です。

 

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ブラッククラックルが完全に残っているモノではボトムスタンプは見えませんが、これは擦れで僅かにZIPPOの文字とパテントナンバー(特許番号)が見えます。

前述のイレギュラー物では、リッドトップにも刻印が入るW刻印モノや、パテントナンバー2032695の2番目の2が抜けているエラー刻印モノ(これは4バレルにしか存在しないらしい)もたまに見かけます。

ブラッククラックルの後期型は底面がラウンドしている所謂“船底”と呼ばれ、縦に自立させる事が出来ません。

これは当時ブラスより硬いスチールを使っていた事で、プレス機の新しい受け具が痛まない様に使い古した受け具から使用していた為と言われています。エラー品がチラホラ存在するのもこれが原因かと思われます。

 

スタンプ間違ってるし、形ちょっと変になっちゃったけど、どーせ黒く塗り潰す訳だし、戦争終わるまではコレでいくしかねぇな。と当時のZIPPO社の方々が思ったのかどうかは定かではありませんが、リーバイスの大戦モデル然り、そういうアメリカンな価値観や、そうせざる得なかった背景を感じられる一つのディテールではないでしょうか。

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オイル止めは現在のフェルトパッドタイプとは違い、フリントチューブの脇を通る1本物のシガレットフィルター型と呼ばれるモノですが、残念ながら既に腐った綿あめの様になってしまっています。前期型ではこのオイル止めは2本タイプになっています。

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打ち抜きのダルマカム、小口径14穴チムニー、水平歯フリントホイール、半円形ホイールステイ、シガレットフィルター型のオイル止め。

性能云々は抜きにして、この細かいディテールの違いや、度重なる使用から来る現行品には決して無い雰囲気を味わえるのも、古い物の醍醐味ですね。

 

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インストラクションは付いていませんが、当時の紙箱も入手しました。

これはミリタリーボックスやキャラメル箱とか言われている、ライターが丁度収まる位の小さな箱で、主にブラッククラックルに使用されていたボックスです。前期頃の物は中央のイラストがブラッククラックルになっていますが、1944年からはイニシャルが入ったブラッシュ仕上げの1946年モデルのイラストに変わっています。

この事から戦争が終わる前、1944年には既に次のモデルの準備とアナウンスが出来ており、ZIPPO社は割と正確に戦況を把握していたと思われます。

因みにこの箱の在庫は後に46前期モデルや、リペア返送用に回されたようです。

 

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インナー・ケース共にスチール素材故に、クリック音が(特にリッドを閉める時や、テーブルに置いたりなんかした時に)鉄らしく「カキン」という音が鳴るのが好きで、男性、もとい野郎共なら分かってくれる方、多いのではないでしょうか。

 

オイルを入れてしばらく使ってみましたが、特に不具合も無く、まだまだ現役で使えそうです。

 

冒頭では希少品と書きましたが、探せばまだ見つかる筈なので、気になった方は探してみては。

 

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